ヘプセラ錠による低リン血症

ヘプセラ錠による低リン血症

2016.02.05

<症例>
・63歳 男性。慢性B型肝炎の治療で長期ヘプセラ錠を服用していた。
低リン血症のため、ヘプセラ錠がテノゼット錠に変更となり、アルファロールとホスボリン配合錠が追加となった。

 <背景>
・ヘプセラ錠の副作用で腎臓が悪くなって、体の中のリンが低くなっていると言われた。骨折しやすくなってきているらしい。リンを増やす薬を出すって。何でリンを飲むの?

 処方    消化器内科

ゼフィックス錠100 1錠 1日1回 朝食後 14日分
テノゼット錠300㎎ 1錠 1日1回 朝食後 14日分
アルファロールカプセル0.5μg 1カプセル 1日1回朝食後 14日分
ホスリボン配合顆粒100㎎(リンとして) 2包 1日2回朝夕食後 14日分

 
<ヘプセラ錠で腎障害、低リン血症を起こすメカニズム>

・ヘプセラの活性代謝物であるアデホビルは、近位尿細管上皮細胞に存在するトランスポーター(hOAT1)によって腎尿細管細胞内に取り込まれる。細胞内濃度が高くなることにより、腎尿細管障害が発現する可能性がある。これにより、リンの再吸収が減少し、低リン血症が起こると考えられる。

 <考察>
・B型肝炎には急性と慢性があり、慢性患者のほとんどが肝炎の症状がなく、無症状のまま経過するため、患者の多くが気がつかないと言われている。治療法として、インターフェロン(IF)と核酸アナログ製剤の2種類がある。IFは効果は弱いが耐性出現がなく免疫増強作用がある。
・現在国内で発売されている核酸アナログ製剤は、ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビルの4種類で経口製剤である。強い抗ウイルス作用を発揮するが、ラミブジンは耐性株出現が高頻度であり、危険を有する。現在第一選択薬となっているエンテカビルやテノホビルは、ラミブジンと比較して耐性変異出現率が極めて低い。
・アデホビルは、ラミブジン耐性がみられた患者のラミブジンとの併用治療に有効である。
・この患者の場合、アデホビルはラミブジン耐性ウイルスを抑制するために併用療法として使用されていた。
・代替薬としてエンテカビルとテノホビルが考えられるが、エンテカビルは切り替え時にHBV DNA量が2.6 log copies/ml以上であった場合は、ラミブジン耐性ウイルスの有無に関わらずエンテカビル耐性ウイルスが出現する可能性がある。
・一方、今回処方となったテノホビルであるが、6年間投与で耐性変異の出現は認めなかったと報告されており、代替薬として有効である。

・アデホビルの重要な副作用は腎機能障害と低リン血症である。
・ラミブジンとアデホビルを併用した症例における腎機能障害についての最近の報告では、平均64か月の投与により、腎機能障害(eGFR<50 ml/min/1.73m2)が9.6%に、低リン血症が27.1%に出現している。テノホビルでも同様の副作用がある。腎機能低下が認められる場合は、投与間隔を長くするなど注意が必要である。

 ・生体内のリンの85%‐90%は骨にある。腎臓でろ過された無機リンの85%‐90%は再吸収される。リンの再吸収の大部分は近位尿細管での能動輸送による。
・アデホビルの長期投与により尿細管障害が起こると、リンの再吸収減少により低リン血症が起こり、骨痛、関節痛、筋力低下をともなう骨軟化症があらわれ、骨折することの注意喚起がなされている。(重大な副作用)
・低リン血症の治療薬として、経口リン製剤(リン酸ナトリウム製剤)がある。
・くる病や骨軟化症をきたす低リン血症の患者に活性型ビタミンD製剤と投与することで、低リン血症の改善が得られている。
・用法・用量に関する明確な基準はなく、国内の臨床試験で初回投与量として設定した20-40mg/kg/dayを目安としている。血清リン濃度は投与1~2時間を経過した後、急激に低下する。このため、血中濃度を保ち、胃腸障害を低減するために1日数回に分けて、服用することが望ましい。
・発現機序は十分に解明されていないが、経口リン酸製剤の過剰投与、又は長期にわたる経口リン酸製剤と活性型ビタミンD 製剤の併用療法により「腎臓の石灰化」や「腎機能障害」が発現する可能性が考えられているので、十分注意が必要である。

 
参考)
・ヘプセラインタビューフォーム
・ホスリボンインタビューホーム
・B型慢性肝炎治療のガイドライン

 

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