胃切除術後および胃全摘術後患者に対するビタミンB12の経口投与の有効性

胃切除術後および胃全摘術後患者に対するビタミンB12の経口投与の有効性

2013.12.27

<症例・患者背景>
50代女性 
しびれなどはない。「胃がんの手術をし、V.B12が減るらしく今日薬が出た」とのこと。
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(外科)
メチコバール500μg  3錠
1日3回毎食後    28日分
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<文献報告>
胃切除術後および胃全摘術後患者に対するビタミンB12の経口投与の有効性を検討した研究報告がある。

目的:食物中に含まれるビタミンB12の吸収には,胃壁細胞から分泌される内因子を必要とするため、胃切除術および胃全摘術後により胃壁細胞が減少または消失している状態では、血清ビタミンB12の有意な低下が認められている。
このため、本来胃切除術および胃全摘術後のビタミンB12欠乏症の治療には,ビタミンB12を筋注し続ける必要がある。
しかし大量経口投与されたビタミンB12は濃度勾配により吸収され,内因子を必要としないことが分かっている。胃切および胃全摘症例についてメコバラミン(メチコバール)の経口投与の有効性を検討した。

方法と対象:幽門側胃切除B-I 法11例,胃全摘R-Y 8例にメコバラミン(メチコバール顆粒)1日量1.5mg を分3 で4 週間経口投与し,血清ビタミンB12濃度を測定した。

成績:投与前,2 および4 週目の血清ビタミンB12濃度は胃切例で,412±33,581±62および701±94pg_ml,胃全摘例で312±40,440±34および469±30pg_ml と増加した。
胃切例では有意な正の相関(R=0.799,p=0.003)を示し,メコバラミン投与前の血清ビタミンB12値が高いほど血清ビタミンB12の増加量は大きかった。
一方,胃全摘例では,負の相関の傾向(R=-0.674,p=0.067)を示し,メコバラミン投与前の血清ビタミンB12値が高いほど血清ビタミンB12の増加量は小さかった。

結論:ビタミンB12の吸収には,低濃度の時の主たる吸収経路である内因子依存性の吸収と,高濃度の時の主たる吸収経路である濃度勾配依存性の吸収がある。
大量高濃度に経口投与されたビタミンB12は,内因子に無関係に濃度勾配に従い受動的に回腸上部から下部にかけて吸収される。
常用量(1.5g)のメコバラミン経口投与は,胃切例および胃全摘例において筋注をせずとも長期経口投与によりビタミンB12の血中濃度の低下を抑え,欠乏症の発症を抑えることができることを示している。
さらにこれは臨床の場において,患者の筋注を続けることへの不安や苦痛を取り除き,また外来での管理を容易にすることもできる。

 
<参考文献>
日消外会誌34(5):439~444,2001年
原  著  胃切除術後および胃全摘術後患者に対するビタミンB12の経口投与の有効性
国際親善総合病院外科 織畑道宏 加戸秀一 竹内弘久 畑真 森脇稔 掛川暉夫

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