認知症に効果のある漢方薬

認知症に効果のある漢方薬

2013.04.12

Rp) アリセプトD5mg  1T  1×昼食後  28日分
ツムラ八味地黄丸  7.5g  1×夕食間  28日分

<八味地黄丸>
八味地黄丸は、従来「腎虚」の治療方剤として、老化を基盤とした種々の病態(老年症候群)に用いられてきたものである。昔から、少し呆けてきた時、これを用いたことが古医書にかかれている。

(効果)
八味地黄丸の老人性痴呆に対する効果を二重盲検ランダム化比較試験(RCT)で検討した結果、認知機能とADLを改善することが分かった。 軽症から中等症のアルツハイマー病、脳血管性痴呆および両者の混合型の痴呆患者33人を、八味地黄丸30丸/日の群17人とプラセボ30丸/日の群16人にランダムに分けた上で、8週間にわたって内服させた。両群の背景因子に差はなかった。 治療前と治療終了後、さらに8週間経過後の時点で、認知機能の指標であるミニメンタルステート検査(MMSE)スコアと、ADLの評価指標であるBarthel Indexを測定した。その結果、MMSEスコアは、実薬群では治療後に2.5ポイント有意に改善し(p<0.01)、8週間経過後は治療前の値に戻った。プラセボ群では有意な変化は見られなかった。Barthel Indexも、実薬群では治療後に17.5ポイント有意に改善し(p<0.01)、8週間経過後は治療前値に戻った。八味地黄丸に関連する副作用はなかった。 八味地黄丸は、SPECT(単光子放出断層掘影)を用いた別の研究で、老人性痴呆患者の前頭葉や側頭葉の脳血流を改善させることが分かっている。

(参考)
MMSE:時間や場所に対する見当識、注意、記憶、計算力、言語能力、遂行の各高次機能を計30点満点で評価。
Barthel Index:排便、排尿、整容、トイレの使用、接触、移乗、移動能力、着衣、階段、入浴の身辺動作10項目からなり、0点(全介助)から100点(完全自立)の値をとる。

<抑肝散>(よくかんさん)
認知症の周辺症状である心理行動学的症状(BSPD)は幻覚、妄想、脱抑制、昼夜逆転、徘徊、易怒、暴言などであり、介護者にとって非常に負担となっている。伝統的に怒り・興奮を抑制するため用いられてきた抑肝散がBSPDの改善に有効であり、しかも同時に日常生活動作(ADL)を向上させる効果があることが分かった。

(効果)
BPSD症状のある認知症患者52例を対象に、ランダムに抑肝散投与群(27例:7.5g分3)とコントロール群(25例 通常治療)にわけ、それぞれ4週間にわたって検討。比較検討にはそれぞれNPI、Barthel Index、MMSEを評価スケールとして用い、同時に副作用である錐体外路症状についても記録した。その結果、抑肝散投与群ではBSPDのマーカーであるNPIが37.9±16.1(投与前)から19.5±15.6(投与後)へと有意な改善が見られた。これに対してコントロール群では治療前後で有意差はほとんど認められなかった。また、ADLの評価スケールであるBarthel Indexは抑肝散投与群では56.4±34.2(投与前)から62.9±35.2(投与後)へと有意な改善が認められた。なお、全般的な認知機能の評価スケールであるMMSEについては両群とも有意な変化は認められなかった。副作用については、抑肝散投与群では認められなかったが、対照群では11例がコントロール不良で塩酸チアプリドの追加投与を必要とし、6例がふらつきなどを訴えた。この結果から、抑肝散は認知機能には影響は及ぼさず、BSPDとADLに有意に効果があることが分かった。

(作用)
抑肝散の構成生薬の1つである釣藤鈎にはアミロイドの凝集を抑制する働きがあることがわかっている。

(参考)
NPI:精神症状を評価するスコア。妄想、幻覚、興奮、うつ、不安、多幸、無為、脱抑制、易刺激性、異常行動の10項目につきそれぞれの頻度を0~4の5段階で重症度を0~3の4段階で評価。点数が大きいほど悪い。

<参考文献>
2005年 メディカル朝日8月号 別刷
Home Care MEDICINE Autumn 2005
日医雑誌 第134巻・第6号/2005年9月
Journal of the American Geriatrics Society 52(9)、2004

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